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平成29年度第3回イブニングセミナー
群馬大 佐藤先生

イブニングセミナー(群馬大佐藤先生)
11月2日JFCA平成29年度第3回イブニングセミナーがJFCA会議室で実施されました。

トレンドの話題について理解や議論を深めていただくために、JFCAではイブニングセミナーを開催しています。今回は、群馬大学大学院 理工学府 環境創生部門 准教授 佐藤先生から「セラミックスナノ結晶の精密合成とその応用展開」について、ご講演いただきました。

材料分野では、すっかり市民権を得たナノ材料・ナノテクノロジ-。ナノ粒子化し、材料の有する機能の改良や新機能の発現が盛んに行われています。ただ、ナノ粒子化をすれば単純に性能が向上するわけではなく、ナノ材料のユニークな特性を十分に発揮させるためには、サイズだけでなく、形態、結晶構造、欠陥構造等を精密に制御する必要があります。その性能を最大化して製品化を行っているファインセラミックスの分野でも、これらの制御が必須なのは言うまでもありません。

ナノサイズの結晶性粒子(以下ナノ結晶)はバルク結晶とは異なる特性を有することが知られています。これらの特性はそのサイズだけでなく、欠陥構造、結晶性などに強く依存することから、所望の機能を十分に引き出すためには、これらを精密に制御可能な合成プロセスが鍵となります。本セミナーでは、最近開発に取り組んでいる水溶液中に分散可能な高結晶性酸化物ナノ結晶の合成プロセスについて、実例を示しながら概説いただきした。また、水溶液中での高い分散性を利用した複合体の合成やその応用についても示していただきました。

ご講演では、研究の概要とナノ結晶合成のニーズについてのご紹介がありました。電池・触媒・センサーなどの機能デバイスだけでなく医療用途への応用なども視野に入れられているとのご説明がありました。次いで水中分散ナノ結晶合成プロセスの概念ですが、一度凝集した粒子は再分散できないとのこともあり、再析出と凝集の抑制がデザインする上での課題です。水中分散酸化物ナノ結晶の精密合成の事例として、①単斜晶および正方晶ZrO2ナノ結晶の選択成長、②SnO2ナノ結晶の形態制御、③ナノ結晶への異種元素ドーピング(YSZ)について解説をされました。濁りや沈降がないナノ結晶分散水溶液の見本が回覧されました。次に水中分散酸化物ナノ結晶の応用事例として、水中分散YSZナノ結晶を用いたSOFCの高性能化について、電極のナノ構造化により発電特性の飛躍的な向上が可能となり、従来のLSM/YSZに比べて、同じ温度であれば3.4倍の出力を、同様の出力であれば100℃以上の低温化が達成できるとの説明がありました。

フリーディスカッションに移ると、ご出席いただいた方々の興味に合わせた幅広い内容についての質問が佐藤先生に、一方で佐藤先生からは産業界での活用についての質問が発せられ、リラックスした中にも、知的好奇心を刺激するやり取りが続きました。佐藤先生は、一つ一つの質問の意味を深く考えながら全ての質問に回答されていました。ご参加いただいた方々には満足いくフリーディスカッションだったのではないでしょうか。

最後になりますが、佐藤先生とご参加いただいた皆様方に感謝を申し上げます。





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